コミフォラ・モンストローサ Commiphra monstruosa のベアルート株(抜き苗)を”水耕栽培”で発根促進させた際、反省点や収穫点、気をつけた点などを覚書きします。
クリーニング作業
衰弱した株の 蘇生効率(薬剤浸透、病気予防 他)をあげるためのクリーニング作業です。
①主根・側根の腐食根・枯れ根を除去
当然のごとく腐食したり枯れている箇所からは発根しませんので、迷わず切断除去しましょう。
主根・側根の切断面からは雑菌に侵入されやすいため、殺菌・防疫はしっかりと(後述)。
②殺菌、殺虫、防疫、防カビ
検疫を”回避”した害虫の潜伏、輸送時の当て傷から腐食が始まるケースもあります。
株全体に殺虫・殺菌・防疫、防カビ対策の薬剤を株全体に散布または浸水させましょう。植物個体の大きさや耐性、または殺菌水の濃度・成分などにより浸水時間の調整を計りましょう。
今回はベンレート殺菌水へ1日浸水(株全体をスプレー殺菌 含む)させました。
水耕環境の整備
水耕容器
▶植え込み用の特大鉢|水溜バケツと特大鉢を重ねて、隙間にヒーターマットを挟み込む
肥料、病気予防系
▶ラリー水和剤|殺菌、病気予防。時々スプレー噴霧
▶ベニカXファインスプレー|防疫対策。時々スプレー噴霧
▶バチルス菌液|納豆菌によるカビ抑制や病害対策。希釈水&スプレー噴霧
▶メネデール|特に灌木系の発根促進に強い印象。希釈水&スプレー噴霧
▶オキシベロン|定番の発根促進剤。希釈水。
▶クエン酸|酸性へ傾ける。発根促進作用
▶水溶性ケイ酸|アルカリ性へ傾ける。発根促進作用
電気機器
▶PH/ECメーター(酸度・肥料濃度チェッカー)|数値バランスが悪いと肥料効能の効目が落ちます
▶ヒーターマット|保温。水温維持
▶エアポンプ一式|酸素不足を補う処置(頻繁に水替えをするなら必要ない)
▶扇風機|風が止まると酸素供給も落ちるので水質劣化も早くなります。他、湿度調整やカビ抑止
水耕管理の要点
特に気をつけた点
・水温維持
・酸性度/肥料濃度
水耕環境
水温 | 37±3度 |
---|---|
PH(酸性度) | 5.5〜6.5 |
EC(肥料濃度) | 0.5〜2.5(※一般的に土耕の場合は0.5〜1.5) |
水替え頻度 | 3〜5日に1回 |
周辺温度 | 30±2度 |
周辺湿度 | 65±10% |
以下、☆の数で重要度↕
「水替え・ヌメり取り作業(水質維持)」☆☆☆
株から滲み出る不純物により徐々に水が澱んできますので、こまめな水替えが肝要です。(温水は特に水が腐りやすい)
浸水している根元部分にも不純物がまとわりついてヌメってきますので、柔らかいスポンジ(または強めのシャワー)を使って洗い流します。これを放置しておくと、カビ発生や病原菌の温床になり発根が阻害されます。
「酸度・肥料濃度の調整」 ☆☆
酸性度(以下PH)と肥料濃度(EC)のバランスによって肥料効果は上昇します。
「PH/EC計(酸度・肥料濃度チェッカー)」は手元に1台あったほうが何かと安心です。
(ざっくり数値判断ができればいいので自分は4千円前後の安価な計測器を使っています)
水耕中のPH値(EC値)の変化は著しいものです。
(薬剤投与がない場合)半日で5.5→6.5 に変化します。
ただ正直、何しろ株がデカくて水替えするのも億劫(汗)でしたので、
急場凌ぎで「クエン酸(酸性)」と「水溶性ケイ酸(アルカリ性)」で酸度調整を計りました。
これにより1〜3日間は気休め程度で水替えを先延ばししてました(←非推奨w)
過去には、
O.パキプスの水耕管理でもPH/EC調整を計りました↓
「水温調整」☆☆
バケツを重ねた隙間にヒーターマットを挟みこんで保温する方法はかなり効果的でした。
常時33〜40度の水温をキープ。コミフォラには適温だったようです。
(加えて、バケツ下からはLED灯の放熱を活用し保温しました)
「湿度、温度、通気性」 ☆☆
周辺環境の温度・湿度に関して、極端に高低差が出ないように配慮し、各植物の適正温度に応じたい。
枯れ気味のベアルート株は乾燥させないこと、湿度55%以上は常時欲しい。
長期の水耕によるリスク
水耕による発根作業のリスクが伴うとすれば、
将来的に土耕環境に移行した際にうまく適応できず根腐れする可能性がある点です。
土中の菌への抵抗力不足や通気性の悪さが主な原因です。
個人的な対策としては、
・腰水にして徐々に土環境に慣れさせる
・根元を水苔やベラボンで保護して植え込む(通気性の担保)
・雑菌や虫繁殖の原因となる動物性肥料は混入しない
・粒状の殺菌・殺虫剤を混入する
・ゼオライトを多めに混入し、土壌の浄化作用を促進させる
・鉢底炭を使い、土壌の浄化を計る(※アルカリ度が強いので注意)
など。
【コラム】「現地発根株」と「山採り株」について
今回購入したC.モンストローサは鮮度保証済みの「現地発根株」でしたので、根周りの切除は行わず、株全体を消毒するだけに留めました。
「現地発根株」(※「山採り株」共に業界用語)とは、原地で伐採された後に一旦近隣国や国内の仲卸業者へ受け渡され、その土地で定植して再発根させた後に輸出される株を指します。将来的に遠方国へ輸入する前提として積載港近くで定植された株は、輸送時間が短縮されることにより輸入国に到着した時点でも高い鮮度が保たれています。
一方で、定植の過程を経ずに伐採後そのまま他国へ輸出される「山採り株」は、前者と比べて輸送効率に劣るため(伐採地からの輸送時間過多)、輸入国へ到着した時点で既に衰弱している株が多いのが常です。
※近年では現地指導により株の防腐処置や輸送効率も改善されつつあり、たとえ山採り株であっても絶望視するほどの劣悪な状態ではないことを付言します。
まとめ
発根成功の秘訣は、発根を促す前に腐食の進行を喰い止めることが先決です。
発根促進剤で悩む前に殺菌、殺虫、防疫、防カビ対策に打ち込むことが先決です。
芽吹き開始のタイミングから発根促進剤の比重を高める意識で十分です。
あくまでも個人的な考えですが、
山採り株のような鮮度に不安がある場合、いきなり土耕(腰水含む)するのではなく、雑菌侵入のリスクが少ない水耕のほうが安心かもしれません(頻繁に水替えする前提)。
いかんせん、土の中は雑菌だらけです(※無菌土除)。土の配合が悪ければ酸素不足になり根腐れする可能性もあります。事前に土を”お湯消毒”したとしても善玉菌まで殲滅しそうだし・・
今後機会があれば複数株の山採り株を水耕発根させて自信を得たい。
(-。-)y-゜゜゜
- 水耕管理の要点おさらい
- ☆腐食部分の除去
☆ 殺菌、病気予防
☆水質維持
☆水温調整
同カテゴリー一覧
- 2023-02-02
- 2022-06-16
- 2022-06-01
- 2022-05-18
- 2022-04-17
- 2022-04-12
- 2022-04-08
- 2022-01-25
- 2022-01-23
- 2021-11-01